ビシージ・時間との闘い
ログインすると薄紫のシステムメッセージが流れました。
3月29日午前2時に始まるサーバーメンテナンスのお知らせです。
今回は、チョコボレースの実装とか。
おいらはまだ、チョコボを育てたことがないので、このコンテンツに関して、すぐには関係ないなと思いました。
そのことより、最近の合成スキル上げに多額のギルを投資したので、それが気になり、少しでも金策の商品合成をやっとこうと思っていました。
なごやかにチャットと合成を楽しんで、夜も午前1時をまわる頃、ふとLSの誰かが言いました。
「ビシージ来るんじゃない?。」
ビシージとは、昨年発売された追加ディスク「アトルガンの秘宝」で新たに実装されたコンテンツです。
獣人が、魔笛と呼ばれる宝を奪いにアルザビという町に攻めてきて、そこでPCとの市街攻防戦をするという内容のものです。
普段はソロで活動が多いおいらなので、ビシージには、正直あまり興味を持っていませんでした。
なぜなら、攻めてくるモンスター達のレベルが高く、レベル60程度のおいらでは有効な攻撃が出来ません。
さらに、この町のエリアに最大700人のPCが集まるので、何をしているのか分らないほど、ログが飛んだり動きが重くなるので、さほど面白さを感じていなかったのです。
そんなおいらでも、最近のビシージには関心を持たざる得ませんでした。
おいらのいるワールドは、「Siren」。通称「試練鯖」です。
我がワールドは、このビシージが開始された当初から今日まで、一度も負けたことの無い無敗のワールドなのです。
無敗のワールドはもう一つ、Lakshmiワールド。勝ちの数こそ、我がSirenのほうが上ですが、ビシージの発生するタイミングの差なので、同じトップと言って良いでしょう。
普段から、おいらとフレとの会話で、
「向こうも、試練負けねえかなとか思ってるんだろうなあ。」
「んだねえ。楽鯖には負けられないな。」
とか出るくらい、関心の高い事です。きっと、Lakshmiワールドでも、同じような会話がなされている事でしょう。
つまり、
「トップの座は譲れない。」
という意識がSiren全体にあるのです。
そんなご時世の中、今回のビシージ発生の可能性。
今は午前1時を回ったところ。メンテナンスの始まる午前2時に、もしかしたらビシージがぶつかるかもしれないのです。
午前1時15分。フレMにtellで聞きます。
おいら「あのさ、ビシージ途中でメンテナンス始まったらどうなるかわかる?。」
M「ビシージ途中でメンテナンス始まると、負けっぽい。」
おいら「え?マジ?。」
M「(1時)40分過ぎに獣人が拠点を出発すれば、ぎりぎり(町に)届かないかな?。30分ぐらいだと危ないぽい。」
今回はマムージャとよばれる、トカゲのような獣人の軍が攻めてくるのですが、彼らはその拠点から町まで行軍してくるのです。
フレMによると、町での戦いが始まってからメンテナンスでサーバーストップになると、自動的に我がSirenの負け。
行軍中にサーバーストップになると、どうなるか判らないとの事でした。
おいらは、なんとかメンテまで攻め込むなと願っていました。
「古鏡けっこう割れてますね。」
LSの誰かが言います。
古鏡とは獣人軍の拠点にある物で、それを壊すと、町への獣人軍の出発を遅らせたり、攻防戦になっても、通常より敵へダメージを与えやすくなるようです。
この古鏡の知識は、おいらには全く無く、受け売りで正確な情報ではないかもしれませんのであしからず。
古鏡は何枚かあり、その数が減っていると言う事は、誰かが獣人の拠点に乗り込み、少しでも出発を遅らせるのと、獣人の弱体化を謀っているのです。
おいら「おお、誰かがもう動いているのか!!。」
さすが、今まで連勝無敗のワールドです。このメンテナンスという不理な危機的状況に、最善を尽くそうとしている人たちがいます。
この状況を把握しているPCは皆、この先制攻撃に期待をかけたでしょう。
「すこしでも、メンテナンスまで時間稼ぎが出来れば…。」
その願いも空しく、ついに獣人軍が行軍を開始した報告が入りました。午前1時28分。
さっき、フレMが危険と予想した午前1時30分より早く出発しています。これでは、確実に市街戦は避けられません。
LSのRさんが
「15分で片付ければ間に合うんじゃない?。」
おいらは、町にいるPCの人数をチェックします。その数約350人。
このワールドなら350人でも、普段のビシージなら勝てます。しかし、今回はこれでは間に合いません。この人数では時間がかかりすぎて、メンテナンスに間に合わないと思われます。
「まずいな、350人しかいないよ。」
おいらは、あわてて、所属しているLS全部のに残っている人たちに、ビシージ参加を要請しました。
あと、ログアウトして今はいないフレの携帯にメールして、危機的状況とヘルプを伝えました。
おいらと、同じような事をしている人がいるのか、だんだんアルザビの町には人が増えてきました。
450人…500人。
午前1時40分ぐらいでしょうか。
フレMが、町の外に出て行軍の様子を探っています。どうやら、獣人の拠点とアルザビとの半分の距離まで、行軍は進んでいるようです。
アルザビでは、いよいよ士気が盛り上がるのと同時に、やはりこのメンテによる初黒星に納得いかない旨のシャウトも飛び交うようになって来ました。
たしかに、おいらも今回だけは不条理に思います。PCの力が無く負けたなら、潔くそれを認められますが、メンテナンスという強制的なもので、かつそれが負けになってしまうのは、やはりどうかと思うのです。
もはや、時間的にビシージの最中にメンテナンスの時刻を迎える事は避けられません。
もう一度、町にいるPCの数を調べてみます。
561人。
メンテナンス直前で、普通ならログアウトするPCの多い時間です。そんな時間にこの人数。やはり、無敗ワールドの意識の高さの表れでしょう。
「来た。」
「きたぞ。」
周囲の声がざわめきます。と同時に町に獣人が攻め入ったという報告。
ついに、ビシージが始まりました。
午前1時51分。メンテナンスまであと9分。
ビシージ開始のイベントムービーに、PCが早く早くと急かします。ランダムにPCがアルザビのあちこちに配置され開戦です。
古鏡を破壊してくれたのが功を奏したのか、おいらの攻撃によるダメージもいつもより、通っているように感じます。
ビシージは、とにかく相手のモンスターを多く倒し、撤退させれば勝ちです。
町に襲ってきたモンスターは、大小様々。
とにかく、雑魚から片っ端から倒していこうという意識は戦っているPCに皆あるようで、いままで見たことのないくらい、軽快なスピードで敵が倒れてゆきます。
「いける。いけるぞ!!。」
と思った時、誰かのシャウト。
「2時になりましたー。」
「あっ」と言う間に9分は過ぎてしまったのです。
メンテナンス開始を案内するシステムメッセージがログアウトを促します。
おいらは、獣使いだったので、広域スキャンで残りのモンスターの数をチェックしました。しかし、まだまだその数は多く、撤退するには程遠い数でした。
おいらは、もはやこれまでかと思いました。
するとフレMが、
「あと5分。」
なにを言いたかったのか、本意はわかりませんが、たぶんメンテナンスに入るまでの時間の余裕を計算したものだと思います。
2時は過ぎましたが、まだ回線は繋がっています。ワールドはまだ稼動しています。そしてPC誰一人、あきらめずにまだ戦っています。
「こうなったら、落とされるまでやってやる。」
もう時間的にもぎりぎりの戦いです。1秒でも早く敵を倒すのと同時に、1秒でも長く回線が途切れないよう祈りながら、敵に攻撃をしかけます。
2時2分。2時3分。
まだ、ヴァナに留まっています。
2時5分。もういい加減限界の時間です。
早く、もっと早く敵を・・・!!。
「いけえぇ!!。いけええええええ!!。」
その時…。
ビュウオオオオオオオオオオオオオオオン
……瞬間移動魔法・デジョンの音。
ふと、今斧を振り落としていた敵が目の前から消えて行きます。
PCの歓喜の声が周りから沸きあがります。
「やったーーー。」
「よくやった。」
「勝ったぞー。」
獣人の撤退です。
そうです。
我がSirenワールドはこの戦いに勝利したのです!!。
午前2時6分50秒。
イベントムービーの時間を除けば、正味15分の戦い。
おいらにとっては、久々に他のPCとなにかをやり遂げたと言った、大きな満足感。魔笛を死守すると言う目的を最大限に味わった、今回のビシージでした。
歓喜の声がなお続きますが、取得経験値と戦績を確認した後、次々にログアウトしてゆくPC達。
おいらも、一緒に戦ったLSのメンバーに声をかけログアウトしました。
チョー感動!!。やったぜ 試練!!。
追記:2007年3月29日午前11時現在。無敗記録:Siren 617回 Lakshmi 609回
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