思い出話#6夜の森
やがて日は落ち、ロンフォールの森に夜が訪れました。
エル男Aとタル女Cとおいらのパーティーは、西ロンフォールから東ロンフォールへと続く峠を見つけました。
峠を越えると、そこには西と同じような森が広がっています。しばらく3人で、西と同じようにモンスターを倒しながら進みます。
レベル的には西と同じぐらいの強さなので、3人であれば安定して探検が出来そうです。
「あれ、なんだろう?」
エル男Aが言います。
「初めて見るモンスターだ。」
おいらが言います。
視界の先に黒い犬か狼のようなモンスターが居ます。直感的に、リビングデッド系のモンスターであること感じました。
エル男A
「やってみる?^^。」
タル女C
「やる~。」
おいら
「OK。」
エル男Aが、攻撃を仕掛けます。
すぐさまタル女Cが、ストーンを唱えます。
おいらは、二人のHPに気をつけながら、ケアルを唱えます。
初めての敵という事もあって、なかなか強そうに見えます。もしかしたら、なにか特殊な攻撃をしてくるかも知れません。
そんな、不安と緊張のなかの戦闘。
キャイィィン…。
敵は、犬が逃げるときの弱腰の声と共に倒れました。おいらたちの勝利です。
するとメッセージ欄に、
[敵は反魂樹の根を持っていた。]
エル男Aのジョブがシーフなので、アイテムがドロップしやすいようです。
おいら
「なんだこれ?ハンコンジュ?。」
タル女C
「なんにつかうんやろ?。」
エル男A
「さあ…?」
使用目的不明な、不思議なアイテムです。
おいらは、その”反魂樹”という名前にとても特別なというか、ファンタジー性というか、異世界の雰囲気を感じました。とても好きな感覚です。
アイテムロットして、反魂樹の根はタル女Cの手に渡りました。
おいら
「いいなあ~。」
そのアイテムの名前に魅かれたおいらは、使い方もしらないのに、もう一匹出ないかな?と密かに思っていたのですが、その後この冒険では、その黒い犬のモンスターには出会いませんでした。
ところで、このPTを組んでいる3人の戦闘作戦は、
エル男A・シーフ・全力で殴る。
タル女C・黒魔導師・全力で攻撃魔法を唱える。
おいら・白魔導師・全力でケアルを唱える。
と言った単純なものでした。
このころのおいらたちは、ヘイト(敵対心)なるものの存在をよく解っておらず、ただただ全力投球の戦闘を展開していました。
こんな戦闘では、当たり前ですが黒魔導師の敵対心が大きくなり、敵はタル女Cにへばりつきます。
それでも、おいらのケアルなどであまり危なげなく戦闘をこなし勝利してきました。
いや、実際は危なかったのかも知れません。でもその時はその危険性よりも、3人での快進撃に酔いその事に気づかなかったのです。
いつしか、3人はこのエリアでは勝てない相手はいないという変な自信を持っていました。
…そんな時
タル女CのHPを示すゲージが瞬く間にゼロになりました。戦闘不能です。タル女Cはすぐに、その場から消えました。ホームポイントに戻ったのです。
残されたおいらとエル男Aは、からくも勝利しましたが、その自分達の置かれた状況に愕然としました。
タル女Cは同じエリアには居ません。
表示を見ると、西ロンフォールに居るようです。
そういえば、しばらく前に西ロンフォールのアウトポストで3人ともホームポイントの設定をしたのでした。
タル女C
「ここ?どこ?。」
戦闘不能で急にホームポイントに飛んだので、軽いパニックに落ちているようです。
エル男A
「西ロンフォールだよ!。いまから行くから待ってて。」
タル女C
「ごめーん。急いでそっち行くから待ってて。」
どうやら、タル女Cは西ロンフォールから、おいらたちがいる東ロンフォールに合流しようとしています。
おいら
「だめだ。危険だよ。1人じゃ危ない。」
3人のPTで進んだから、こんなに遠くまでこれたのです。でも1人ではロンフォールの森は危険すぎます。
エル男A
「タル女C。そこで待ってて。」
タル女Cはエル男Aの制止を聞いて、なんとかアウトポストに留まってくれました。
おいら
「迎えに行こう。」
おいらとエル男Aは今来た道を帰り、西ロンフォールとの峠を目指します。
おいら
「戦闘は無しで進もう。」
エル男A
「うん。」
3人で来た時は安全でしたが、今は二人。
しかも、攻撃の要の黒魔法を使えるタル女Cは遥か西ロンフォール。
このまま何かと戦闘を起こせば、二人とも戦闘不能の可能性が高い状況です。
たった一人欠けただけで、さっきまでの自信に満ち溢れた冒険者から、ひたすら敵に見つからないように逃げるように進む臆病者に変わったのです。
周りの敵がすべて自分達の死の影に見えます。
そんな影におびえ、エル男Aの背中を必死に追いかけるタルタルのおいら。
峠を越えやっと西ロンフォールに入ると、タル女CのPTステータスも復活して、同じエリアにいることを確認しました。
でもまだまだアウトポストは遠くにあります。夜の森は暗く、動く物の影に怯え迂回しながら、進んでは立ち止まり、周りを窺い、安全を確認し、ジリジリと進みます。
今思えば、峠からアウトポストまでの距離はたいしたものでもないのですが、その時の森の道はとても長く感じました。
タル女C
「(二人が)見えた~!!。」
アウトポストの方を見ると、タル女Cが駆け寄ってきます。やっとタル女Cと合流です。とりあえず一安心です。3人ならこのエリアでは無敵です。
落ち着きを取り戻し、エル男Aが
「今度は、南に行ってみる?^^」
3人は南に駆け出します。
でも、さっきまでの3人とは違います。
過信が戦闘不能と紙一重であることを学び、レベルアップした3人なのです。
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